プロに聞く7.ドライクリーニング返却後に手洗いしたら汚れが?!

Yshatu

原宿にあるファッションケアたきもと(※残念ながら、現在は体調を崩され閉店(2018.9追記))の代表、そして日本ファッションケアの代表理事も務める滝本さんに、普段なかなか聞けないクリーニングの実情について、ちょっと詳しくお伺いしました。ファッションケアたきもとは原宿という場所柄、業界人が数多く訪れる人気店で、難易度の高いシミ抜きを得意とし、アパレル各社からのクリーニングに関する相談も多いといいます。
今回は、ドライクリーニングに出して返ってきた衣類を水洗いしたら汚れが出てきた!本当に汚れは落ちているの?という疑問について伺いました。

聞き手:
クリーニングや洗濯する場合、汚れを落とす洗浄力から言えば、
ぬるま湯より熱いお湯の方がいい、温度が高いほど、洗浄力は強くなりますね。

滝本:
水洗いで温度が高いほど汚れが落ちます。
汚れが溶けるのは温度の力によります。
木綿のワイシャツや白衣を昔はぐらぐらするような熱湯に近い温度で洗って真っ白になっていました。

しかし今は温度の時代ではないのです。
繊維や素材が熱に弱いものが多くなってきましたので、高い温度では洗えません。
最近ワイシャツを40度以下で洗える洗剤が開発されて販売されています。
石油から作られた合成界面活性剤の代わりに、
天然のオレンジオイルなどが入っている界面活性剤が、出てきました。

エリの汚れなど前処理の必要がありません。
白いワイシャツのきれいさを求めていけば、温度は60度以上になります。
60度以上になるとワイシャツの襟芯が痛んだりしてきます。
繊維を洗うのに60度は良い温度とは言えません。

聞き手:
ワイシャツのエリがクリーニングに出してもきれいにならなかったということをよく耳にします。
ある主婦から、ドライ品がクリーニングから返ってきたら、
汚れが取れていないので、自分で簡単に手洗いしたらきれいになった、
あのクリーニング屋は下手だ、という話を聞いたことがあります。

滝本:
それは水洗いの品物ではなくドライクリーニングされた品物ではないかと思われます。
ドライクリーニングは石油の溶剤を使いますから、
食べこぼしのようなシミなどはよく取れないのです。

ドライクリーニングした後、汚れは逆ミセルというものに包まれているのですが、
それを水につけると溶解して溶けてくるのです。だから水に浸けるだけできれいになったわけです。
クリーニング屋がダメではなく途中までの作業をやってあげた、そして主婦が仕上げをしたということです。

クリーニングでもドライクリーニングでは油性の汚れは水洗いよりもよく取れるわけです。
水溶性の汚れはミセルに包まれた状態になっています。
それをもう一手間かけて水にさっとつけてあげると、とても良い仕上がりになるはずです。