プロに聞く5.バーバリーやシャネルなど、海外ブランドのライセンス衣類のクリーニング事情。

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原宿にあるファッションケアたきもと(※残念ながら、現在は体調を崩され閉店(2018.9追記))の代表、そして日本ファッションケアの代表理事も務める滝本さんに、普段なかなか聞けないクリーニングの実情について、ちょっと詳しくお伺いしました。ファッションケアたきもとは原宿という場所柄、業界人が数多く訪れる人気店で、難易度の高いシミ抜きを得意とし、アパレル各社からのクリーニングに関する相談も多いといいます。
今回は、クリーニング時に慎重な判断が必要な、海外ブランドのライセンス衣類のクリーニングについて伺いました。

聞き手:
イギリスのバーバリーと三陽商会のバーバリーやシャネルジャパンのように、
日本に会社があるブランド品と、海外で直接買ってくるブランド品は、
同じブランドでも、品物はまったく違っているのですか?

 

滝本:
三陽商会のバーバリーはライセンスもので日本製ですから、海外製品とは言い難いですね。
シャネルなどの場合は海外で作られた製品を日本向けに生産し、日本語の洗濯表示をつけます。

ブランドの日本の会社経由の場合、服の品質表示や洗濯表示が、
外国語のものと日本語のものと2種類つけられていて、それで見分けています。

洗って色がでるのはお国柄で仕方がないことなので、いきなり洗うのではなく、
洗う前に色が出るかどうかをテストしてみて、それ相当の処理をしないと、とんでもない結果になることになります。
海外メーカーですから、そのトラブルについて交渉することも出来ません。
デリケートな品物の場合、洗う、クリーニングするということよりも、
お手入れという考え方の方がいいのではないでしょうか?

お客さまの要望が、脇が汗をかいている、ファンデーションが付いている、
裾回しが汚れているというであれば、前処理で部分的に汚れを取って、後はすすぐということで、十分キレイになります。
脱水も軽く脱水し、乾燥機に入れずに自然乾燥すれば、ダメージは少なくすみます。

デリケートな衣類の典型ですが、きらきらとしたストーンが一面に付いているダンスドレスを洗っています。
ダンスは動きの激しくスポーツのようなものですから、汗を多く吸っています。
ダンスドレスの場合、ストーンは接着剤で取りつけられていますので、時間がたつとボンドが劣化してきて剥がれます。

前処理でファンデーションをとり、水槽につけたり、シャワーで洗い流します。
それだけでも十分にキレイになります。脱水もしません。ダラ干しです。
気をつけないといけないのは、染色の弱さですね。

聞き手:
ダンスドレスの縫製の人から、ミシンを当てているだけで、手に生地の色が付いてしまうと聞いたことがあります。

滝本:
それは後染めしているんです。ダンスドレスの場合、デザイン上、真っ赤な色を要求されるわけです。
染色する場合、ソーピング工程といって不純なものを洗い流して染色堅牢度を上げるわけですが、
洗い流してしまうと要求された真っ赤な色が出ないことになります。
そうなると染色堅牢度を無視した染色にならざるを得なくなります。

聞き手:
黒も色が出ることもあります。

滝本:
黒の染色も難しいのです。なるべく色を厚くのせておかないと黒い色にならないのです。
当然染色堅牢度が不安定になります。
もともと黒は赤と青を混ぜたものですから、どちらかが弱いと黒でなくなってしまいます。
ダンスドレスは汎用性のあるものではなく、あるダンスドレスのためだけに作られるものだから、
十分神経が行き渡らないものなんですね。