伝統の国イギリスで誕生し世界の標準となったスタイル~スーツの世界を知る~①

スーツはどのようにして生まれたのか?


参照:https://kashiyama1927.jp/kashinavi/post_10.htm

現代社会において、「スーツ」は正装として世界共通のスタイルと言えるでしょう。ディティールにはいろいろと違いもありますが、確立されたスタイルとして、世界中の国で愛用されています。では、なぜこのようにスーツが世界中で着られるようになったのでしょうか? スーツの世界を知るために、まず、スーツの歴史から紐解いていきましょう。

伝統の国、イギリスでの誕生

スーツの原型と言われるフロックコート


フロックコートの男性 参照:https://afflux.jp/article/weddingnews_129/

スーツの原型となったスタイルは「フロックコート」だと言われています。18世紀ころに確立したスタイルで、イギリスの農民の着る作業着から派生したとの説もあります。
コートという名の通り、膝まで丈があり、ダブルブレストで次第に上質な生地を使用したものが現れて、外出着として着られるようになります。やがて、シャツ・ベスト・ネクタイ・パンツが一揃いになり、イギリス男性の昼間の正装として確立されていきます。これが、現在のスリーピーススーツの原型とも言われます。
フロックコートはイギリス人男性の定番となり、正装としても用いられるようになりましたが、あくまでも外出着として進化してきました。一方で、当時の交通手段といえば「馬」が主なもので、貴族の遊びなどでも乗馬や馬を使用した狩猟などが盛んでした。しかし、外出着であるフロックコートは丈が長く、馬に乗るときに邪魔になるという欠点があります。そこで、考案されたのが「モーニングコート」や「燕尾服」です。
これらは、フロックコートの前裾を大胆にカットして、馬にまたがりやすくしたもので、燕尾服はさらに機能性を重視して、後ろの裾をツバメの尾のように二股にしています。
フロックコートよりも「着やすさ」や「機能性」を重視したこのスタイルは、次第に現在のように「モーニング」は昼の正装、「燕尾服」は夜の正装という定義になっていったのです。

モーニングコート 参照:https://bottone.jp/blog/bottone-ceo/12980.html

さらに「着やすさ」を追求したラウンジジャケット


ラウンジスーツ 参照:https://voxsartoria.com/post/85409550838/1892-the-american-lounge

フロックコートやそこから派生したモーニングや燕尾服は、1800年代半ばのイギリス貴族では正装として定着していました。毎日のように開催されていた、貴族たちの正式なディナーでは男性が燕尾服、女性がイブニングドレスを着用するのが定番です。
しかし、やはり昔の人でも堅苦しいスタイルで厳かな雰囲気のなか、毎日食事をするのは疲れてしまうようで、ディナーの後は男女に分かれて別室でリラックスした会話を楽しんでいたそうです。
男性達は、スモーキングルームで葉巻を楽しんだようで、その際には堅苦しい燕尾服を着替えて、さらに「着やすい」短い丈のラウンジジャケットというものを着用していました。そして、このラウンジジャケットこそが、現在のスーツに最も近いものだと言われています。
室内着であったラウンジジャケットは、徐々にその気軽さから外出時にも着られるようになり、現在のタキシードやスーツに変化していくのです。

日本でのスーツの歴史

幕末から明治にかけて広がったスーツスタイル


参照:https://www.jacar.go.jp/glossary/tochikiko-henten/qa/qa01.html

イギリスで原型が誕生して、ヨーロッパやアメリカにも広がっていったスーツスタイル。日本では、外国との交流が盛んになってきた幕末から入ってきたと言われます。一番有力なのは、まだ礼装などの用途ではなく、着物よりも機能性が良いことから軍服に採用された洋服が起源だとの説が有力です。テレビや映画などでは、幕府軍と明治政府軍の戦いなどで、武士が洋装をしているシーンを見た人も多いでしょう。
明治5年には洋装の礼服に関する布告が政府よりなされて、次第に皇族や華族の間で積極的に洋装をすることが多くなっていきました。その先頭に立ったのが、明治天皇だと言われていて皇后とともに日本の洋装化を牽引しました。
しかし、明治時代の初期にはほとんどの人が和装で生活していて、明治20年ころまでスーツを含む洋装は、一部の貴族や富裕層のみのものだったといいます。
大正時代から昭和初期になると、西洋文化が庶民にも広がり「モボ(モダンボーイの略)」に代表される、スーツを着る男性も多く見られるようになります。ただ、この時代のスーツは、オーダーメイドで非常に高価だったと言います。

時代を反映するスーツの姿

昭和の前半に戦争が始まると、物資の不足などから一般の人は「国民服」と言われる質素な服装が推奨され、スーツのみならず、ファッション自体が停滞することになりました。
そして、終戦。日本は敗戦から徐々に立ち直り、高度成長期が訪れます。この頃には技術も進歩して、大量生産のスーツが製造されるようになり、スーツスタイルが一般的になりました。ただ、グレーや紺の地味なビジネススーツが多かったため、「ドブネズミルック」などと称されることもあったようです。
1960年代からは、アビールックが流行して、一般的にも「お洒落なスーツ」が認識され始めます。その後は、日本社会でのファッションに対する許容範囲も広がりを見せて、女性物のスーツが売上を伸ばし、デザイナーズブランド全盛期では多様なデザインのスーツが着られるようになりました。このような歴史を経て、現在の日本では自分に合ったスーツを多くの選択肢から選べるようになったのです。

スーツとジャケットどう違うのか?


参照:https://byts-navi.com/tailored-jacket-coordinate/

スーツの歴史は、ご紹介してきたようにイギリスで外出用のコートから始まりました。コートがより機能的に、着やすいかたちに進化していったものが、タキシードやスーツとなったのです。それと似たような道を辿ってきたのが、一見同じように見えるスーツとジャケットです。もともとは同じものなので、人によってはあまり違いを重要視しない場合もあるかもしれません。しかし、現在のアパレル業界では、「ジャケットはカジュアルなもの」という定義が一般的で、フォーマルな場でも通用するスーツとの違いもはっきりしています。

着丈やパンツの違い


セットアップスーツ 参照:https://perfect-s.com/announcement/detail/0000000000000056

まず、スーツとジャケットの大きな違いは着丈です。スーツの場合は、昔のフロックコートなどの名残から着丈は長めで、裾でお尻まで隠れてしまう長さです。一方でジャケットの場合には、一般的にスーツよりも2センチから3センチ程度着丈が短くなっています。これは、カジュアルさを強調するためで、裾が短ければ見た目も軽快になるので、よりラフな印象を演出できるのです。
次にスーツとジャケットの違う点は、皆さんご存知だと思いますが、パンツがセットになっているかということです。販売スタイルによって、例外はあるかもしれませんが、スーツの場合、同じ生地で製造したパンツがセットになっているのが特徴です。ただ、ジャケットの場合にもパンツがセットになっている場合もあります。「セットアップ」と言われ、カジュアルな雰囲気で、通常のスーツとは区別されるものです。

ポケットの形状や肩パット


アウトポケット 参照:https://appuntito.jp/archives/7062/

ポケットの形状や肩パットもスーツとジャケットでは違っています。まず、ポケットですが、位置としては胸やサイドなど、どちらもほぼ同じ位置にあります。ただ、スーツの場合には、生地に切れ込みを入れてポケットを作っています。
一番スタンダードなものは「フラップポケット」と言って、フタのような布がついているタイプです。このフラップは、本来屋外での雨やホコリを防ぐものとして付けられていて、正式には屋外では外に出し、屋内ではポケット内に入れるのがマナーと言われています。ただ、現在では常に出していることのほうが多く、マナー違反にはなりません。
一方、ジャケットでは、「アウトポケット」や「パッチポケット」と呼ばれる、生地を縫い合わせたポケットが一般的です。フラップもない場合が多く、よりカジュアルな見た目となっています。
肩パットでの違いは、基本的にスーツには有り、ジャケットには無い、というのが一般的です。ただ、近年では一昔前のように、かつての軍服の影響を受けたようなカッチリとした構造のスーツは減ってきています。「アンコンストラクテッドスーツ」というジョルジオ・アルマーニが提唱した、非構造的なスーツが主流となり、肩パットが薄く、ジャケットとしても着られるものもあります。
いずれにしても、スーツとジャケットの違いは「フォーマル」か「カジュアル」かの違いです。TPOをよく考えて、ドレスコードはないかなど慎重に着ていくものを選びましょう。

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