今回ご紹介するのは、素材や状態に応じて工程を緻密に調整しながら、美しさを取り戻した2つの事例。
ひとつは、カビがびっしり広がっていた白地のソファカバー。
もうひとつは、長年の使用と気候によるダメージで変色したルイ・ヴィトンのモノグラムデニムリュック。
どちらも、一見すると手遅れに見える状態かもしれません。しかし、クレアンの素材への理解と技術へのこだわりによって、ここまで回復することができました。
それぞれのBefore→Afterを、ぜひご覧ください。
繊維を傷めず、カビだけを落とす。職人の“塗る”漂白技術
【Before】
こちらは白いソファカバー。
通気性が悪い状態で保管されていたのでしょうか。カビが全体に繁殖しています。
斑点状の黒カビが広がり、繊維の奥にまで根を張っている状態でした。
【作業工程】
まず、カビの状態を見極めながら、特殊な漂白剤をカビの箇所に一点ずつ直接塗布していきます。
漬け込み処理は行わず、あえて直接塗る方法を採用することで、必要な部分に集中的に漂白効果を発揮。また、短時間で処理できるため、生地へのダメージを最小限に抑えることができます。
処理後は生地をこすらず丁寧に洗い流し、繊維の風合いを保ちながら清潔な状態へと整えました。
【After】
水玉状に広がっていたカビがしっかり除去され、本来の白さがよみがえりました。
再発を防ぐため完全に乾燥させて、仕上げにも細心の注意を払っています。
ルイ・ヴィトン モノグラムデニムリュック|色ムラ・変色の染色修復
【Before】
長年の使用により、全体の色が抜け、デニム特有の青みがあせてグレーがかった印象に。
特に日差しが当たりやすい中央部分には変色も見られ、素材本来の風合いが損なわれていました。
【作業工程】
このモノグラムデニムに使われているのは、染色強度の弱いインディゴ系の染料。
さらに日本の高温多湿な気候が、色抜けだけでなく変色を引き起こします。
このようにムラが生じた布地に対しては、全体を一様に染めるのではなく、部位ごとに染色の濃淡を微調整しながら、手仕事で少しずつ色を重ねていく方法を採用。
素材と状態に合わせて染料と顔料をバランスよく使い分けながら、自然な仕上がりを目指しました。
【After】
くすんでいた印象が一掃され、深みのある青が復活。モノグラムの柄もくっきりと映えています。
違和感のない色調と自然な風合いを両立させる、職人の高い染色技術による一品です。
繊維や染料の特性を見極めながら、手加減ひとつで仕上がりが変わる。
プロのクリーニングやリカラーには、「元通り」以上の価値があります。
クレアンでは、お客様が大切にしてきた品を、素材の本来の美しさを活かす形で蘇らせることを何より重視しています。
汚れや変色がひどくても、もう使えないかもと感じても、まずはお気軽にご相談ください。
一点ずつ状態を確認し、最適な方法をご提案させていただきます。